岡山市の「まちなかウォーカブル推進事業」とは

住んでいるひとも、遊びに来たひとも、みんなが魅力を感じるまちを目指している岡山県岡山市。中心市街地は、観光地をはじめ文化地区、商店街、公園、オフィス、個性的なお店、飲食店、アパレル店、夜の街、集合住宅などがコンパクトに集まる職住混在のまちです。

路面電車やバスなど交通網も行き届いていて、地方都市には珍しく、車優先ではなく<人優先>になれるポテンシャルを持つまちでもあります。

一方、岡山県の1世帯あたりの台数は全国で21位と車社会の地域だといえます。政令指定都市で約72万人が暮らす岡山市へ、郊外から中心部へ車で移動する人が多いことから、まちなかには駐車場が増えつつあります。

そんな状況を打破するため、「歩いて楽しいまち」をキーワードに、多様なアクティビティが溢れるまちを目指すのが岡山市の「まちなかウォーカブル推進事業」です。「公園の利活用による街なかのまちづくり、にぎわいづくり」と「中心市街地回遊性向上のための事業の実施」をミッションに掲げ、みんなが歩きたくなる公共空間の実現に向けて様々なアクションを起こしています。

 

にぎわいの中心へ。「ハレまち通り」の再整備とは

まちなかウォーカブル推進事業として2020年に着工し、2022年3月に整備が完了したハレまち通りの様子

2020年、「歩いて楽しいまち」への第一歩として、岡山駅周辺エリアから旧城下町エリアまでを東西に結ぶハレまち通り(旧・県庁通り)の再整備がスタートしました。「県庁通り」から愛称を「ハレまち通り」に改め、快適で歩きやすい道路へとリニューアルします。

 

市街地の中でも特に賑わいのある2エリアを結ぶハレまち通り

ハレまち通りは、JR岡山駅周辺からイオンモール岡山、表町商店街をつなぎ、まちなかのにぎわいの核として重要な道路です。一方通行かつ15メートルの道幅という特徴を持っており、ひと優先の歩行空間をつくり、新しいにぎわいの創出や市街地の回遊が期待されます。

同プロジェクトの重点は、2車線だった全長約600メートルの道路を1車線化したこと。自転車・歩行者の通るスペースを広げ、まち歩きが安全・安心に楽しめる快適な空間を実現しました。

1車線化することで自転車の走行空間や十分な歩行空間を確保
ハレまち通りに接するフルーツジューススタンド「マルゴデリ」前の風景

さらに、ベンチや連続照明を設置。テイクアウトしたドリンクを片手におしゃべりをしたり、歩き疲れたときに休憩したりと、ベンチがあることで通り全体がカフェスペースのような空間へと様変わりし、楽しげな光景が広がりました。

 

つくって終わりじゃない、通りを軸としたまちづくり

整備が進むと、「まちなかがにぎわって良くなったよ」といったポジティブな声が寄せられました。近隣の飲食店からは「歩道を活用したオープンカフェをはじめてみようかな」「イベントを開催したい」など、まちの活性化につながる意見も上がります。

移動手段を歩きにシフトして、移動速度を遅くすると今まで通り過ぎていたであろう気になる店に気軽に立ち寄ることができ、まちとひとの交流が生まれます。知らなかったまちの一面を発見したり、面白いひとに出会ったり、歩くことは「岡山市って楽しいまちなんだ!」と気づくきっかけにもなります。

そんな歩く楽しさを提案するハレまち通りのリニューアルは、まちのことをもっと好きになる、何か新しいことにチャレンジしたくなるなど、「まちが変わると、住むひとの気持ちも変わる」ことを教えてくれる事例となりました。

岡山市役所 庭園都市推進課街なかにぎわい推進室の舌崎博勝さん

ハレまち通りを中心に、さらなる盛り上がりをみせそうな岡山市。プロジェクトを担当した舌崎さんは、「道路整備はゴールじゃなくて、新しいまちのスタート地点。ここで市民のみなさんにいい景色を見せられるように頑張ります」と語ります。

まちなかウォーカブル推進事業の一環として、ハレまち通りから150メートルの場所にある「下石井公園」の広場を芝生にするプロジェクトの実施や、コインパーキングと歩道を一体的に活用したマーケットイベントも検討しています。まさに、整備して終わりではなく、通りを起点としたにぎわいを創出している最中。完成したハレまち通りがどのようなシナジーを生むかにも注目です。

 

Text:岩井美穂(ココホレジャパン)