
「TAKENAKA AS AN ARTIST」自分が初めて建築・まちづくりへ興味を持ったきっかけは何か
2025年2月8日(土)~2月24日(月)にグラングリーン大阪うめきた公園ノースパークVS.にて開催された展覧会である。
2週間という限られた期間の中で2万5千人以上の来場者数を記録し、建築・まちづくりの魅力に対して楽しく触れる機会を大人から子供まで幅広い方々に提供することができた展覧会として、大盛況で終わりました。
竹中工務店大阪本店 開発計画本部の、私、畦上も本展のメンバーとして、実際に展覧会メンバーとして展覧会を企画・運営しました。実際に展覧会を作った「中の人」として、この展覧会の意義や思い、伝えたいこと。そして実際に起こった化学反応などをリポートできたらと思っています。
まず、本展の特徴として、株式会社竹中工務店の作品やレガシーを紹介する従来型企業展示ではなく、竹中工務店の若手を中心とした展示企画チームを結成し、同メンバーが主体的に展覧会の中身をつくっていく新しい試み、” TAKENAKA AS AN ARTIST”に挑戦したことです。

これは「従業員が自ら考え、つくり出す」というプロセスを踏んだ、全く新しい企業展であり、部署や専門性が異なるメンバーが約1年間かけて、企画・構想から展覧会の運営まで取り組むことで、より主体的に当事者意識をもってイチから展覧会をつくりあげていきました。
1つの企画を長い時間をかけてメンバーで議論し、徐々に形にしていく経験は通常の業務では中々経験できないものとなりましたし、メンバーそれぞれの個性・特徴を尊重しながら方向性を擦り合わせていくことで今回の展覧会が出来上がりました。
企画段階では、メンバーがそれぞれ建築・まちづくりへの興味を抱いた原体験を共有する中で、より根源にある建築・まちづくりへの原動力やきっかけが何なのかを深掘りしていきました。また、来場者目線で企画・アイデアを批評することで、いかに一般の人々に建築・まちづくりの面白さ・新たな視点が得られる体験づくりになっているのかを見つめ直していきます。
このようなプロセスが、「縮尺」という一見専門的なテーマを、親しみやすい体験型の展示やワークショップを通じて一般の人々に伝えることに、さらには、たてもの・まちづくりのおもしろさを広く発信することを目指した企画展へと繋がりました。
「縮尺:スケール」建築・まちづくりをより身近なものとして感じてもらう工夫とこだわり

展覧会場は4つの部屋で構成されています。実寸大の展示、スケールを変化させた模型展示、ブロックを用いたまちづくり体験など多様な手法で縮尺の魅力を探求することができ、それぞれの部屋を巡る中で、「縮尺:スケール」といった、一般の方々には日頃馴染みのない考え方を伝える・感じてもらうことを目指しています。
順路についても、導入としてリアルな空間(1/1)を初めに体験し、徐々にスケールを行き来することで、展覧会場を出るときにはリアルな空間・世界の見え方が変わっていること、新たな視点を持ってもらいたいという意図から構成されており、たてもの・まちづくりの隠れた面白さを体験できるようになっています。


部屋1:等身大になる部屋
日本人なら誰もが馴染みのある空間を日本の伝統的な寸法「一間(約1.8m)」で切り取ることで、より身体的にスケールを感じ取れるようにしています。部屋には必要以上の情報・説明文が無いのも特徴の1つであり、よりスケールを感じ取れるような工夫が随所に見られます。

部屋2:スケールを横断する部屋
この部屋では、多くの方が訪れたことがある建物(あべのハルカス、通天閣、海遊館など)や、まち(梅田、万博公園周辺など)を題材とし、3つのスケール(1/10、1/100、1/1000)で取り扱うことで、「縮尺」をより捉えやすいようにしています。また、インタラクティブコンテンツや壁面サイネージだけでなく、模型をできるだけ簡素にして情報を減らすことや、模型高さ(スケールごとで異なる)を変えるなど、展覧会コンセプトをより明快に伝える多くの補助線・工夫が散りばめています。

部屋3:たてもの・まちをつくる部屋
1間サイズを100分の1にした1間ブロックを使って、来場者の方に自分の想いを込めた「たてもの」をつくってもらう部屋になります。ここで使われるブロックについてはメンバーがアイデアを出し合い、これからの資材・環境を考えながら建築・まちづくりをしてもらえるように、葦ブロック、布ブロックなど様々な素材から作られたブロックが用意されています。

建築をつくる、まちづくりに参加してもらうことをいかにこの部屋で体験してもらえるのかを考える中で、ブロックの質感・素材が異なるだけでなく、それぞれのブロックに特性を割り振り、その特性に沿ってまちがリアルタイムに変わっていくインタラクティブコンテンツ(ひゃくいちシティ)を構築しています。
部屋4:これからの技術にふれる部屋
本展のテーマに沿った展示・世界観が守られた上で未来の技術を紹介しており、前の部屋で来場者自ら体験したブロックを自動ロボットが行っていたり(ロボットアーム)、実際の業務に使われている都市情報・シミュレーション(サイバー都市ビューワー)などを学ぶことが出来ます。

後編では企画展で行われた数々のイベントに触れながら、企業が発信していくべき建築・まちづくりのこれからを考えていきます!
アイキャッチ写真:山口大地
Text:畦上駿斗(竹中工務店)





