塩尻のワイン文化から着想を得た社会実験

長野県塩尻市でワインの醸造が始まったのは1897年。国際ワインコンクールでも度々受賞し世界的に認められ、日本有数のワイン先進地として知られています。現在もまちに16のワイナリーが点在し、加えてワイン大学やワインサークル、コミュニティヴィンヤードなども人気です。

そんなワインの生産で有名な塩尻で、ワインを屋外で気軽に楽しめたら……と組み立て式のテーブルを製作し、アイテムをきっかけに賑わいをつくる「塩尻ワインテーブルプロジェクト」が始まりました。

地域課題解決のために「塩尻ワインテーブル」を設置

市街地である塩尻駅に降り立つと、ぶどうを模した装飾や樽のオブジェ、ぶどう棚があちこちに見られます。さすが塩尻ワインのまちです。

一方で人はまばらで寂しい印象がありました。分析すると、駅前には飲食店が少なく、商店街へも距離があるので賑わいが分散してしまい、なかなか人溜まりができにくいという課題が浮かび上がってきました。

そこで、駅前広場に塩尻ワインを楽しく飲んでいる人たちがいたらどんな変化が起こるだろうと、塩尻駅前広場でワインが提供されるイベント「塩尻ワインテラス」が企画されました。

居場所をつくるアイテムのひとつとして「塩尻ワインテーブル」も加わり、賑わいのきっかけづくりができるのか、社会実験を行いました。

塩尻駅前広場で開催されたイベント「塩尻ワインテラス」の風景

アクティビティ調査の結果、「塩尻ワインテーブル」には下記の効果があることがわかりました。

・立って使ったり座って使ったり柔軟性があること
・利用者が動かして他の家具と組み合わせて使える自由さがあること
・「ここで飲んでみたい」と思わせるワインに似合うオシャレさを感じていただけたこと

誰でも移動しやすい組み立て式のテーブルに

「塩尻ワインテーブル」は、どこでも、だれでも、いつでも使えるように、移動可能性や組み立ての簡易性を考慮し、少ない部材数で誰でも簡単に組み立てられる構造としました。

テーブル中央にはワインボトルが入り、テーブル縁には ワイングラスをひっかけることができる穴が開いています。また夜の街のあかりとなるように、照明も仕込みました。

誰でも簡単に組み立てられる簡易性とワインに似合うオシャレさを両立したデザイン
ボトルやグラスがすっぽり入る穴があり、まさにワインを飲むためのテーブルに

塩尻のワイン文化と歩むまちづくりを探って

2024年には「塩尻ワイナリーフェスタ」というイベントの一部に「塩尻ワインテーブル」を設営し、人の滞留や交流がどのように生まれるのか観察調査とヒアリング調査を行いました。

「塩尻ワンテーブル」を囲むように人溜りができ、大盛況

イベントでは、気軽な立ち飲みの場として使用頻度が高く、ほぼ途切れずに人だまりをつくることができました。

「塩尻ワンテーブル」のデザインに興味を持って近づいてきてくださる方が多く、相席をする人の中には、グラスの嵌め方を初対面の人に教えてあげたり、記念撮影をしたりと、コミュニケーションを誘発していることが確認できました。

「塩尻ワインテーブルプロジェクト」は実際に「塩尻ワインテーブル」を使っていただきながら、こうしたアイテム(モノ)からはじまる出来事(コト)を観察していきます。

単なる空間が居場所となりうるのか、誘引性はあるのか、その風景がまちの賑わい創出に繋がっているのか。その他の効果やニーズ調査などを交えて今後も検討していきます。