大阪府大阪市のなんばを中心に繁華街の広がるミナミエリア(以下ミナミ)は、御堂筋の歩行者空間化によりキタエリアとの連携が強化され、さらに関西国際空港との直接アクセスによりインバウンドの玄関口となっているエリアです。

今ミナミでは、2025年大阪・関西万博に向けてまちの美化や歩行者が安全・快適に回遊できるまちづくりに取り組んでおり、放置自転車対策に力を入れています。

ミナミの放置自転車対策の歩み

ミナミでは、2000年頃から歩行者数が増加して賑わいを見せる一方で、風俗店の客引き問題や放置自転車・はみ出し看板など、環境・治安の悪化が問題となりました。特に繁華街での放置自転車の増加は、歩行者の移動を妨げ、緊急車両の通行も阻害する深刻な問題です。

2005年以降、ミナミでは官民協力のもと、「駐輪場整備」、「放置禁止区域指定」、「啓発・撤去活動」の3点の放置自転車対策を推進してきました。しかし、必要な駐輪場の整備を終えて駐輪場余地がなくなったこと、啓発活動の効果が限定的であること、撤去可能な台数に限界があることなどを理由に、放置自転車問題は2015年以降改善が停滞。コロナ禍収束後には再び増加傾向を示し、2021年時点では全国2位の放置自転車台数を記録するなど、依然として地域の重要課題となっています。

官民連携での「放置自転車ワーキング」を開始

そんな中、安全で快適な歩行者空間の創出を目指し、2023年4月に官民協働で「放置自転車対策ワーキング」を設立しました。

従来の放置車両撤去や自転車放置者への啓発では十分な効果が得られなかったため、「撤去」「調査」「啓発」を3本柱とする新たなアプローチを採用しています。各施策の実施前後で効果測定を行い、その結果に基づいて適切な取り組みを検討・実施する流れで進めています。

ミナミの放置自転車対策方針

対策① 放置自転車の実態調査

2023年9月、ミナミ全域で放置自転車に関する調査を実施しました。調査結果によると、約4,500台の自転車が道路上に放置されており、一方で駐輪場約4,800台分のうち約4割が未使用でした。放置した市民約1,800人に理由を尋ねたところ、「みんなが停めているから」「面倒だから」という回答が上位を占め、駐輪場の場所や使用方法がわからないという回答は少数にとどまりました。

放置自転車台数と駐輪台数の関係
自転車放置者に対するアンケート結果

対策② 効果的な「リアルタイム撤去」を運用

2023年10月、ミナミエリアでリアルタイム撤去が開始されました。従来は警告札(赤札)を貼付し、警告アナウンスをした上で、一定の猶予時間を置いてから撤去を行っていましたが、アナウンス中に自転車放置者のほとんどが自転車を移動させてしまい、撤去効果に限界がありました。そこで、放置自転車を確認次第ただちに撤去するという、新たな方式(リアルタイム撤去)を導入しました。

さらに、2024年9月には、大阪市が抜本的な放置自転車等対策に向けて民間事業者の公募を開始しました。民間事業者が撤去を実施することにより、これまで困難だった平日および休日の夕方から夜間にかけての放置自転車等の啓発・撤去が可能になります。

リアルタイム撤去のイメージ

対策③ 市民・商店の協力と啓発

放置自転車に関する調査等により、ミナミの中でもエリアによって自転車放置者の属性が異なることが明らかになりました。

主な属性は駅や店舗の短時間利用者、店舗従業員、外国人アルバイトや学生など。商店街や地元住民が一体となり、それぞれの特性に応じた啓発活動を展開しています。

具体的には以下の取り組みなどを実施しています。
1.短時間利用者:放置自転車への啓発札の貼付
2.店舗従業員:店舗への直接的な声掛け
3.外国人アルバイト・学生:日本語学校を通じての周知活動

歩いて楽しいミナミに向けて

これらの取り組みを実施した結果、平日の放置自転車台数は若干減少したものの、夜間や休日では依然として増加傾向にあります。

ミナミは商店街など自転車通行が制限・禁止されているストリートが入り組んでおり、まちの外郭には十分な駐輪場が整備されているため、「ウォーカブルなまち」となっています。また、商店街や百貨店での買い歩き・食べ歩きや、お笑い・歌舞伎・音楽ライブ等のエンタメ体験が豊富で、「歩いて楽しいまち」として関西随一の素養を持っています。

そこで、「ミナミは徒歩で楽しむ」「自転車は押し歩き」「駐輪は必ず駐輪場で」という方針を周知徹底し、大阪・関西万博に向け、ミナミの自転車利用を40%削減する社会実験『大阪ミナミ「アルケル&イケル」プロジェクト』を進めていきます。

ミナミの目指すべき姿に向けた取り組み