越谷レイクタウン(以下レイクタウン)は、埼玉県の南東部に位置する越谷市に整備されたニュータウンです。「新しく水と共存文化を創造する都市」をスローガンに、水害対策として中央に大相模調整池(以下調整池)が建設されました。この調整池は洪水時に水を貯め浸水被害から人々を守ってくれる一方、普段から地域住民の憩いの場やイベントを行う広場として親しまれています。

都市型自動運転船「海床ロボット」の実証実験の場でもあるレイクタウンを、もっと楽しく過ごせる場所にしたい!そんな熱い想いを胸にチャレンジを続けている人たちからお話を伺いました。

暮らしを守る水辺をもっと身近に

今回お話を伺ったのは、埼玉県河川環境課 河川環境担当主幹・石野剛史さん、レイクアンドピース株式会社 代表取締役社長・畔上順平さん、代表取締役・小林利恵子さん。3人の共通点は、レイクタウンの水辺に魅力を感じ、もっと色々な人にとっての身近な楽しい場所になることを目指して活動していることです。

▲右から石野さん、畔上さん、小林さん

――水辺のまちづくりのはじまり

石野さん
2011年に国交省の「河川空間オープン化」として、河川占用の規制緩和があったのをきっかけに、埼玉県としては河川の民間活用日本一を目指していました。越谷市でも水辺を活かしたまちづくりの機運が高まっていましたが、初めての試みなのでやっぱり苦戦しました。最初の3年間は勉強会などを続け、まずはみんなをその気にさせることから始めました。

しかしその3年で河川環境課から部署移動になってしまった石野さん。そこでバトンを受け継いだのが、越谷で生まれ育ち、まちづくりプレイヤーでもあった畔上さんと越谷で沢山の変人と出会ってきた小林さんです。

畔上さん
2016年、越谷商工会議所による「水辺のアーバンアクティビティ・シティ越谷」プロジェクトが始まりました。水辺の調査から始まり、最終的にはイベントとしてアウトプットするという計画。最初は、地元組を巻き込む仲介役のような形で、イベントの一出店者で参加していました。

小林さん
ちょうど同じ頃、越谷という町に関わりたいと思い始め、「まちライブラリー」という地元の横の繋がりを目的にしたイベントを企画していました。そこで越谷市内で面白いことをしている人たち(=変人)に沢山出会い、その中でまちづくりの有名人・畔上さんと出会いました。

――自分ごとにする、勢いを止めない

畔上さん
2018年、商工会議所のプロジェクトは終了すると知らされました。せっかく3年かけて盛り上がってきたところだったので、どうにか継続できないかと市役所にも相談しましたが、すぐの対応は難しそうでした。そうなったらもう自分達でやってしまおう!となりましたね。更なる水辺の可能性を求めて、まずはイベントを大きくしていくため、イオンレイクタウンの協力の元、「Lake and Peace 2019」を自主開催しました。

小林さん
コロナ渦でもイベントは続けました。規模は縮小しつつも、ソーシャルディスタンスをとりながら水辺でピクニックを楽しむなど、屋外だからこそできることがあったんです。緊急事態宣言解除直後の2021年は1万人もの人が参加してくれました。

▲Lake & Peaceの様子
▲Lake & Peaceの様子

そして2022年、更なる水辺の活用を目指して市やイオンレイクタウンと協働していくため、畔上さんと小林さんはイベント運営コミュニティを法人化し、レイクアンドピース株式会社を立ち上げます。

石野さん
河川環境課にもどった頃、越谷市は埼玉県の「水辺deベンチャーチャレンジ」に事業登録、さらにイオン株式会社と「(仮称)大相模調節 池河畔 水辺活用に関する基本協定」も締結し、今まで以上に水辺を大々的に使用する計画を立てられるようになりました。

――どんどん拡大!どんどんアップデート!

畔上さん
現在進行中の「水辺deベンチャー計画」では、2025年のオープンを目指して施設の整備やソフト事業に取り組んでいます。一個ずつじゃ間に合わないので、できるタイミングに同時進行でやっていくしかありません!そうやってどんどんアップデートしていって、水上村みたいなものができたらとても面白いと思います。江戸・東京とは違った水上都市を、越谷の中でロールモデルにできたらいいですね。

小林さん
レイクタウンの水辺が、子供もお年寄りも顔見知りになるような場所になったら素敵ですよね。みんなが顔見知りになることで、自然と心豊かに健康で幸せを感じるようなエリアにしていきたいと思っています。そしてフィールドとして面白い場所でもあるので、実験や探究、学び、そして発信の場所としても活用したいです。

石野さん
“海なし県”と言われる埼玉県ですが、最終的にはレイクタウンにビーチができたら面白いと思っています。みんなが心地よく、楽しく過ごせる場所を目指しています。そして賑わいをつくることはもちろん、きれいな水をつくりだすなど、環境に配慮したカタチになっているのが理想です。

▲水辺活用のイメージ

水辺の環境もアップデート

水辺に人が集まり、賑わいをつくっていくには、長年課題になっている水環境改善も必要です。そこで解決策になりうるのが「海床ロボット」。アクティビティとしてだけではなく、水中カメラや水上ゴミの自動回収機能をつけたロボットが完成すれば、水質調査や定期的なゴミ回収の効果が期待できます。また、浮島形状のフロートを活用した水上畑の活用も実証実験中。

▲海床ロボットの実証実験の様子

石野さん
「海床ロボット」の良いところは、上物を自由に設計できるところです。屋形船は浮かべられないかもしれないけど、新しいカタチのものが越谷の水辺に浮かんでいると面白いと思っています。水上畑も「浮く畑」として、水質浄化が目的だけど、そこで育った野菜が名物になったりするといいですよね。どんなことも真面目に考えすぎるより、まずは面白がって取り組んでみて、実は結果に繋がっていたという方がよくて、多くの人を巻き込むことで効果が大きくなることが理想です。

まずはできることから。だけど勢いをもって取り組み、どんどんアップデートしていく。とにかく行動力がある
3人がどんどん人を巻き込んでいけば、埼玉県に海ができる未来もそう遠くはないかも・・・

次回vol.2では、「浮く畑」のレポートをお届けします!