大阪のビジネス地区である淀屋橋、本町の御堂筋沿道地権者など約50社で構成されているエリアマネジメント団体「御堂筋まちづくりネットワーク」は、“活力と風格あるビジネスエリア”として御堂筋のエリア価値を高める活動をしています。

その活動の一環として大阪市と官民連携し、御堂筋の将来像の可視化やにぎわいと憩いを創出する道路空間のあり方検証の社会実験を行っています。歩道と緩速車線(速度の低い車両のための道路)の一部を使い、仮設の休憩施設を整備・管理運営する「御堂筋パークレット社会実験」を2017年より開始しました。

社会実験を繰り返し、ゆっくりと確かめながら推進

2017年に淀屋橋地区で、2019年に本町地区でそれぞれ約半年間の暫定設置を行い、安全性の検証やエリマネ団体による運営管理の実行性確認、利用ニーズなどを検証しました。

2022年には淀屋橋地区の「淀屋橋odona」前に恒久的な施設として「いちょうテラス淀屋橋」を整備。天然木・大阪府産材の活用や地域情報案内版としてデジタルサイネージを設置し、下記の3つのあり方を継続して検証しています。

①エリマネ団体による持続可能な管理運営のあり方

②イベントなどのにぎわいの創出に向けた利活用のあり方

③地域活動や防災活動の拠点としての活用方策

社会実験の経緯

「いちょうテラス淀屋橋」設置以降、イベント時のにぎわいの創出に向けた利活用のあり方検証として、一時的に側道を閉鎖し歩行者・自転車の通行機能を確保することで民地内の壁面後退部分・歩道・パークレットを一体的ににぎわい空間として活用し、御堂筋の将来像可視化による空間検証を毎年実施しています。

壁面後退部分・歩道・パークレットを一体的に活用したイベント

さらに施設規模を発展させた「いちょうテラス高麗橋」

2024年に高麗橋地区の「三菱UFJ銀行大阪ビル 本館」前において、恒久的な2基目として「いちょうテラス高麗橋」が設置されました。

「いちょうテラス淀屋橋」と同様の天然木・大阪府産材の活用に加えて、整備面積の拡大(デッキ部分を淀屋橋では約15m、高麗橋では約24m延長)、車イス利用者などが利用しやすいフラットエリアの配置、地域情報案内板を2基に増設し、より高解像度の液晶ディスプレイを採用しました。

いちょうテラス高麗橋の設置場所


いちょうテラス高麗橋の写真と平面図

脱酸素や防災機能も備えたパークレットに

御堂筋エリアは2023年に環境省が実施する「脱炭素先行地域」に選定されています。脱炭素社会の実現に向けた新たな機能として、天然木の活用はもとより、ソーラーパネルによる電力供給や街園スケールの植栽帯の設置によりCO2の削減に取り組んでいます。

「いちょうテラス高麗橋」「いちょうテラス淀屋橋」はエリアの防災拠点としても機能しています。

施設設置されたライブカメラを御堂筋まちづくりネットワークHP内の災害時WEB情報システムに接続し、被災時には、道路状況を遠隔でモニタリングでき、会員や関係行政に災害情報がリアルタイムで提供されます。

また、会員に入力してもらった帰宅困難者受入可能ビルの情報が施設のデジタルサイネージに掲出され、帰宅困難者などの円滑な避難誘導を図ります。

「いちょうテラス」でのエリア防災のシステムイメージ

ウォーカブル推進のための制度を活用

本社会実験では道路協力団体制度と歩行者利便増進道路制度(ほこみち)を活用しています。大阪市より道路協力団体に指定された御堂筋まちづくりネットワークが大阪市との協定締結のもと、歩行者利便増進道路(ほこみち)利便増進区域を占用し、施設の整備から管理運営を担っています。

また、御堂筋まちづくりネットワーク主催で設計施工を担う整備事業者の公募を実施し、デザイン性の高い施設整備を実現しました。

活用制度の概要

フルモール化を目指す御堂筋の将来像

2019年に大阪市にて御堂筋完成100周年にあたる2037年にフルモール化を掲げた「御堂筋の将来ビジョン」が策定され、官民連携して「人中心」のストリートを目指し取り組んでいます。

単に歩行者空間が拡がるのでは意味がなく、そこに活動が伴う空間再編がなされることが重要と考えています。常時の憩いに加えて、働く、出会う、交流する、楽しむ、つくる、奏でるなどの文化的、創造的な活動がストリート上で同時多発的になされ、日本中、世界中の人々を魅きつける御堂筋を目指した取り組みに乞うご期待ください!